同じ偉人の名言でも、サイトによって言い回しや発言者が違うことがあります。
実は、偉人の名言として広まっている言葉の中には、本人の著作や演説では確認できないものも少なくありません。
偉人の言葉は、原著・演説・書簡など出典をたどれる言葉を中心に読むほうが、その人物の考えを正確につかめます。
この記事では、哲学者・科学者・指導者・歴史上の人物・作家・経営者の名言を、出典と背景つきで紹介し、よくある誤引用も整理します。
この記事のポイント
- 偉人の名言を著作・演説・書簡などの出典つきで紹介
- 哲学者・科学者・指導者・作家・経営者のジャンル別に整理
- エジソンの「1%のひらめき」は本人の記録と日本での解釈を分けて読む
- 「それでも地球は動く」など、後世に作られた名言も解説
出典のわかる偉人の名言一覧
まずは、この記事で紹介する偉人の名言を、出典とあわせて一覧にします。
どの言葉も、著作・演説・書簡など、もとになった資料を確認できるものです。
| 名言 | 人物 | 出典 |
|---|---|---|
| 我々を殺さないものは、我々を一層強くする | ニーチェ | 『偶像の黄昏』(1889年) |
| 己の欲せざる所、人に施すこと勿れ | 孔子 | 『論語』衛霊公第十五 |
| 想像力は知識よりも重要だ | アインシュタイン | 雑誌インタビュー(1929年) |
| 私が捧げられるのは、血と労苦と涙と汗のみである | チャーチル | 英国下院での演説(1940年) |
| 国があなたのために何ができるかを問うのではなく… | ケネディ | 大統領就任演説(1961年) |
| 身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも留め置かまし大和魂 | 吉田松陰 | 『留魂録』(1859年) |
| 世の人はわれをなにともゆはばいへ わがなすことはわれのみぞしる | 坂本龍馬 | 直筆の和歌(京都国立博物館蔵) |
| 人生とは、大胆な冒険か、さもなければ無か | ヘレン・ケラー | 『The Open Door』(1957年) |
| Stay hungry, stay foolish. | スティーブ・ジョブズ | スタンフォード大学卒業式スピーチ(2005年) |
訳の言い回しは本によって少しずつ違いますが、意味の骨組みは同じです。
ひとことで覚えやすい言葉を探している方は、短い偉人の名言を集めた記事も参考にしてください。
哲学者・思想家の名言
哲学者や思想家の言葉は、今読んでも生き方を考え直すきっかけになります。
ここでは、苦しみとの向き合い方と、人との接し方を説いた言葉を紹介します。
苦しみとの向き合い方(ニーチェ)
ドイツの哲学者ニーチェは、1889年の著書『偶像の黄昏』に「我々を殺さないものは、我々を一層強くする」と書きました。
苦しい経験を避けるべきものとしてではなく、自分を強くするものとして受け止め直す考え方が表れています。
ニーチェのほかの言葉は、ニーチェの名言を解説した記事でくわしく紹介しています。
人との接し方(孔子)
『論語』衛霊公第十五で、弟子の子貢から一生守るべき一言を問われた孔子は、「己の欲せざる所、人に施すこと勿れ」と答えます。
自分がされて嫌なことは人にしない、という思いやりの考え方で、孔子はこれを「恕(じょ)」と呼びました。
同じ衛霊公第十五には、「過ちて改めざる、これを過ちという」という言葉もあり、失敗そのものより改めないことを戒めています。
科学者・発明家の名言
科学者の言葉には、発見や発明の裏にある考え方が表れています。
ただし、有名な言葉ほど、本人の意図と違う意味で広まっている場合があります。
想像力は知識よりも重要だ(アインシュタイン)
アインシュタインは、1929年の雑誌インタビューで「想像力は知識よりも重要だ」と語っています。
知識には限りがあるが、想像力は世界を包み込む、と続けており、まだ誰も見ていない考えを思い描く力を重んじていたことが分かります。
アインシュタインの言葉として広まっているものには出典不明のものも多くあります。
1%のひらめきと99%の努力(エジソン)
エジソンの「天才とは1%のひらめきと99%の努力である」は、努力の大切さを説く言葉として広く知られています。
日本では、最初のひらめきがよくなければ努力しても無駄になる、という意味だったという説も浜田和幸さんの本などで紹介されていますが、英語の原文の記録は見つかっていません(出典:国立国会図書館 レファレンス協同データベース)。
1898年や1901年の記録では、才能よりも努力を重んじる言葉として語られています。
最初は2%と98%だった記録や、エジソンのほかの言葉は、エジソンの名言を出典つきで紹介した記事にまとめています。
政治家・指導者の名言
国の危機に立った指導者の言葉は、演説として記録に残っているものが多く、出典をたどりやすいのが特徴です。
英語の原文で読みたい方は、英語で学ぶ偉人の名言の記事もあわせて読んでみてください。
血と労苦と涙と汗(チャーチル)
イギリスの首相チャーチルは、1940年5月13日、首相に就任した直後の下院演説で「私が捧げられるのは、血と労苦と涙と汗のみである」と語りました(出典:英国議会)。
ナチス・ドイツの脅威が迫る中、楽な見通しを語らず、厳しい戦いを覚悟するよう国民に呼びかけた言葉です。
国のために何ができるか(ケネディ)
アメリカのケネディ大統領は、1961年の就任演説で「国があなたのために何ができるかを問うのではなく、あなたが国のために何ができるかを問いたまえ」と語りました。
国に何かをしてもらうのを待つのではなく、一人ひとりが社会のために動くことを呼びかけた言葉として知られています。
歴史上の人物の名言
日本の歴史上の人物の言葉には、遺書や直筆の和歌として残っているものがあります。
日本の偉人の言葉をさらに読みたい方は、日本の偉人の名言を紹介した記事も参考にしてください。
留め置かまし大和魂(吉田松陰)
幕末の思想家吉田松陰は、1859年、処刑の前日に書き上げた遺書『留魂録』の冒頭に「身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも留め置かまし大和魂」と記しました(出典:青空文庫)。
体は滅びても、志は弟子たちの中に残したいという願いが込められています。
わがなすことはわれのみぞしる(坂本龍馬)
坂本龍馬の「世の人はわれをなにともゆはばいへ わがなすことはわれのみぞしる」は、京都国立博物館が所蔵する龍馬直筆の和歌の中に残っています。
世間に何と言われても、自分のすることは自分だけが分かっていればいい、という龍馬の強い意志が表れた歌です。
夢のまた夢(豊臣秀吉)
豊臣秀吉の辞世の句「露と落ち 露と消えにし 我が身かな 浪速のことは 夢のまた夢」は、大阪城天守閣が所蔵する自筆の短冊で確かめられます。
天下人にまで上りつめた秀吉が、自分の一生を朝露のようにはかないものと振り返った歌です。
作家・女性の偉人の名言
作家や、困難を乗り越えて活動した女性の偉人の言葉を紹介します。
文豪の名言をまとめて読みたい方は、文豪たちの名言を紹介した記事もあわせて読んでみてください。
人生は大胆な冒険(ヘレン・ケラー)
見ること・聞くことが不自由でありながら、教育と社会活動に力を尽くしたヘレン・ケラーは、1957年のエッセイ集『The Open Door』に「人生とは、大胆な冒険か、さもなければ無か、そのどちらかである」と書きました。
安全な場所にとどまるより、恐れずに挑むことを選ぶ姿勢が、彼女の生き方そのものと重なります。
「月が綺麗ですね」は漱石の言葉か
夏目漱石が「I love you」を「月が綺麗ですね」と訳すよう教えたという話は、よく知られた逸話です。
しかし、漱石の著作や日記、書簡などで、この話を裏付ける記録は確認できていません。
経営者の名言
企業を育てた経営者の言葉は、仕事への向き合い方を考えるヒントになります。
ここでは、日本と海外の経営者の言葉を一人ずつ紹介します。
論語と算盤(渋沢栄一)
日本の資本主義の父と呼ばれる渋沢栄一は、1916年の著書『論語と算盤』で、道徳と経済は両立させるべきものだと説きました。
正しい道理にもとづいて得た富でなければ長続きしない、というのが渋沢の考えの中心です。
渋沢の言葉は、渋沢栄一の名言集でくわしく紹介しています。
\ 渋沢の考えを原著で /
Stay hungry, stay foolish.(スティーブ・ジョブズ)
スティーブ・ジョブズは、2005年のスタンフォード大学卒業式のスピーチを「Stay hungry, stay foolish.」という言葉で締めくくりました。
この言葉はジョブズ本人が考えたものではなく、1974年に出た雑誌『Whole Earth Epilog』の裏表紙に書かれていた言葉を、ジョブズが引用したものです。
偉人の名言として広まった誤引用
偉人の名言の中には、本人が言ったという記録がなく、後の時代に結び付けられた言葉もあります。
よく知られた例を紹介します。
それでも地球は動く(ガリレオ)
ガリレオ・ガリレイが1633年の宗教裁判のあとにつぶやいたとされる「それでも地球は動く」は、当時の記録では確認できません。
この言葉が本に初めて現れるのは、ガリレオの死から100年以上たった1757年のことです。
パンがなければお菓子を(マリー・アントワネット)
マリー・アントワネットの言葉として有名な「パンがなければお菓子を食べればいい」は、もとはルソーの自伝『告白』に出てくる、ある高貴な女性の話です。
ルソーがこの話を書いた頃、アントワネットはまだフランスに嫁いでいない少女でした。
人の一生は重荷を負て遠き道を行くが如し(徳川家康)
徳川家康の遺訓として知られるこの言葉も、家康本人が書いたものではなく、後の時代に家康の言葉としてまとめられたものとされています。
家康の言葉とされるものの真偽は、徳川家康の名言を解説した記事でくわしく扱っています。
思考に気をつけなさい(マザー・テレサ)
マザー・テレサの言葉として広まっている「思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから」で始まる一節も、本人の著作や発言記録では確認できません。
偉人の名言に関するよくある質問
偉人の名言が本物かどうかはどう確かめればいいですか?
本人の著作・演説・書簡など、言葉のもとになった資料が示されているかを確認します。
出典が書かれていない言葉や、本によって発言者が違う言葉は、誤引用の可能性があります。
エジソンの「1%のひらめき」は努力を勧める言葉ではないのですか?
1898年や1901年の記録では、才能より努力を重んじる言葉として語られています。
ひらめきの大切さを語った言葉だという説もありますが、本人の記録では確かめられていません。
座右の銘にしやすい偉人の名言はありますか?
孔子の「過ちて改めざる、これを過ちという」は、短く出典もはっきりしていて座右の銘にしやすい言葉です。
失敗したときにどう振る舞うかを考えさせてくれます。
女性の偉人の名言にはどんなものがありますか?
ヘレン・ケラーの「人生とは、大胆な冒険か、さもなければ無か」がよく知られています。
1957年のエッセイ集に書かれた言葉で、出典を確かめられる名言です。
偉人の名言のまとめ
偉人の名言は、出典をたどれる言葉を選んで読むと、その人物の考えを正確につかめます。
ネットでよく見かける言葉の中には、本人の記録にない言葉や、意味が変わって広まった言葉も混ざっています。
気に入った言葉を座右の銘にするときは、誰がどの資料に残した言葉かを一度確かめてみてください。
一つだけ持ち帰るなら、孔子の「過ちて改めざる、これを過ちという」です。