偉人の名言

ニーチェの名言|『ツァラトゥストラ』など著作の言葉を出典つきで解説

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ニーチェの名言

ニーチェの名言としてよく知られるのが、「神は死んだ」や「深淵をのぞくとき、深淵もまたこちらをのぞいている」です。

ただ、ニーチェの言葉として広まっているものには、意訳本の言い回しが独り歩きしたものや、本人の著作にない言葉も混ざっています。

ニーチェの名言はネット上の定番表現を無条件に本人の言葉とせず、著書・講演・書簡・インタビューなど確認できる出典を優先し、背景まで読むことで考え方を正確につかめます。

「深淵をのぞくとき、深淵もまたこちらをのぞいている」は『善悪の彼岸』第146節にある一方、「事実はなく、解釈だけがある」は生前の著作ではなく遺稿の言葉です。

この記事のポイント

  • 「愛せなければ通過せよ」は『ツァラトゥストラはこう語った』の言葉
  • 「深淵をのぞくとき…」は『善悪の彼岸』第146節
  • 「事実はなく、解釈だけがある」は生前の著作ではなく遺稿の言葉
  • 意訳本『超訳 ニーチェの言葉』の言い回しは、原典と違うことがある

ニーチェの名言一覧

この記事で紹介する主な名言を、出典とドイツ語の原文つきで一覧にします。

名言ドイツ語の原文出典
私を殺さないものは、私を強くするWas mich nicht umbringt, macht mich stärker.『偶像の黄昏』「箴言と矢」第8節
もはや愛することができないところは、通り過ぎるべきだWo man nicht mehr lieben kann, da soll man vorübergehn!『ツァラトゥストラはこう語った』第3部
深淵をのぞくとき、深淵もまたこちらをのぞいているblickt der Abgrund auch in dich hinein『善悪の彼岸』第146節
神は死んだGott ist todt!『悦ばしき知識』第125節
いつまでもただの弟子でいるのは、師に報いる道ではないMan vergilt einem Lehrer schlecht, wenn man immer nur der Schüler bleibt.『ツァラトゥストラはこう語った』第1部
事実というものは存在しない、あるのは解釈だけだgerade Thatsachen giebt es nicht, nur Interpretationen遺稿(1886〜1887年)

ニーチェとは

フリードリヒ・ニーチェは、1844年にドイツ東部のレッケンで、牧師の家に生まれた哲学者です。

24歳の若さでスイスのバーゼル大学の教授になりましたが、体調を崩して1879年に大学を辞め、その後は各地を転々としながら本を書き続けました。

『悲劇の誕生』『悦ばしき知識』『ツァラトゥストラはこう語った』『善悪の彼岸』などを書きましたが、1889年に心身を病み、1900年に55歳で亡くなりました。

ニーチェの言葉の多くは短い警句(アフォリズム)の形で書かれていて、原文はNietzsche Sourceなどの原典データベースで確かめられます。

ニーチェの代表作『ツァラトゥストラ』は、新しい訳なら読みやすく、名言が生まれた場面ごと味わえます。

著:フリードリヒ ニーチェ, 原名:Nietzsche,Friedrich, 翻訳:静也, 丘沢
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生き方と強さについての名言

ニーチェの言葉には、苦しみから逃げずに、それを自分を高める力に変えようとする考え方が表れています。

私を殺さないものは、私を強くする

1889年の『偶像の黄昏』の「箴言と矢」第8節にある言葉で、原文は「Was mich nicht umbringt, macht mich stärker.」です。

「人生の軍事学校から」という見出しの下に書かれていて、つらい経験も自分を鍛える試練として受け止めようという考え方が込められています。

人生の「なぜ」を持つ者は、ほとんどどんな「いかに」にも耐えられる

同じ『偶像の黄昏』の「箴言と矢」第12節の言葉です。

「なぜ生きるかを知っている者は、ほとんどあらゆる『いかに生きるか』に耐える」という形でも知られていますが、これは心理学者フランクルが『夜と霧』で引用して有名になった言い回しで、原文は疑問符を使った少し違う形をしています。

高く登ろうと思うなら、自分の脚を使うことだ

『ツァラトゥストラはこう語った』第4部の「より高い人間について」第10節の言葉です。

「運んでもらおうとしてはならない」「他人の背中や頭に乗ってはならない」と続き、人に頼らず自分の力で高みを目指すよう語っています。

人間は乗り越えられるべき何かである

『ツァラトゥストラはこう語った』の「序説」第3節の言葉で、ニーチェの「超人」という考え方の中心にある一文です。

今の自分に満足して立ち止まるのではなく、自分自身を乗り越え続けることに人間の価値があるという考え方です。

愛と人との関わりについての名言

ニーチェは、愛や人間関係についても、常識とは少し違う角度から言葉を残しています。

愛せなければ通過せよ

『ツァラトゥストラはこう語った』第3部の「通過について」の言葉で、原文は「もはや愛することができないところでは、通り過ぎるべきだ」という意味です。

恋愛の別れの言葉として紹介されることが多いですが、もとは堕落した大都市を前にしたツァラトゥストラの言葉で、軽蔑するものに恨みを抱いて立ち止まらず、黙って通り過ぎよという意味が込められています。

愛にはいつもいくらかの狂気がある

『ツァラトゥストラはこう語った』第1部の「読むことと書くことについて」の言葉です。

「しかし狂気の中にも、いつもいくらかの理性がある」と続き、愛の不思議な力をひと言で言い表しています。

いつまでもただの弟子でいるのは、師に報いる道ではない

『ツァラトゥストラはこう語った』第1部の「贈与する徳について」第3節の言葉です。

ツァラトゥストラが弟子たちに、自分を乗り越えていくよう語る場面で、教えを受けた人を超えることこそが恩返しだという考え方が表れています。

ほかの偉人の言葉もあわせて読みたい方は、偉人の名言を解説した記事も読んでみてください。

深淵と解釈についての名言

ニーチェの言葉の中でも特に有名なのが、ものの見方や認識についての鋭い警句です。

怪物と闘う者は、自らも怪物とならぬよう気をつけよ

1886年の『善悪の彼岸』第146節の言葉で、「おまえが長く深淵をのぞくならば、深淵もまたおまえをのぞきこむ」と続きます。

悪と戦ううちに、いつの間にか自分もその悪に似てしまう危うさを警告した言葉で、映画や漫画でもよく引用されています。

事実というものは存在しない、あるのは解釈だけだ

ニーチェの考え方を代表する言葉としてよく引用されますが、生前に出版された本ではなく、1886年から1887年ごろに書かれた遺稿にある言葉です。

世界には誰から見ても同じ「事実」があるのではなく、見る人の立場によって違う「解釈」があるだけだという考え方で、後の哲学に大きな影響を与えました。

若者を堕落させる確実な方法は、同じ考えの者を尊重するよう教えることだ

1881年の『曙光』第297節の言葉で、「違う考えの者よりも、同じ考えの者を高く評価するよう指導することだ」という意味です。

自分と違う意見に耳を傾けることの大切さを、皮肉を込めて語っています。

ニーチェの思想を表す言葉

ニーチェの名言を深く味わうには、その背景にあるいくつかの考え方を知っておくと役立ちます。

神は死んだ

1882年の『悦ばしき知識』第125節で、ランプを持って神を探す「狂気の人」が叫ぶ言葉で、「そして我々が神を殺したのだ」と続きます。

信仰や昔からの価値観がよりどころでなくなった時代の危機を表した言葉で、人生に絶対的な意味がなくなったと感じる状態を、ニーチェは「ニヒリズム」と呼びました。

運命愛と永劫回帰

「運命愛」は、自分の人生に起こることを、つらいことも含めてすべて愛して受け入れるという考え方で、『悦ばしき知識』第276節に出てきます。

同じ本の第341節では、今の人生がまったく同じ形で何度も繰り返されるとしたら、それを喜んで受け入れられるかという「永劫回帰」の問いが投げかけられています。

誤って広まったニーチェの名言

ニーチェの言葉は人気が高いぶん、原典とは違う形で広まったものも少なくありません。

『超訳 ニーチェの言葉』の言い回し

2010年に出版された『超訳 ニーチェの言葉』(白取春彦編訳)は大ベストセラーになりましたが、題名のとおり、原典を現代向けに大きく言い換えた本です。

この本の言い回しをそのまま「ニーチェの言葉」として引用すると、原典の意味とずれることがあるので、元の書名と節まで確かめるのがおすすめです。

「踊る者は、音楽が聞こえない者には狂って見える」

英語圏でニーチェの名言として広まっている言葉ですが、ニーチェの著作や手紙には見当たらず、古くからのことわざがニーチェの名前で広まったものとされています。

また、『権力への意志』という本は、ニーチェの死後に妹が遺稿をつなぎ合わせて出版したもので、本人が完成させた著作ではありません。

ニーチェの名言に関するよくある質問

「愛せなければ通過せよ」はどの本の言葉ですか?

『ツァラトゥストラはこう語った』第3部の「通過について」の言葉です。

「深淵をのぞくとき」はどの本ですか?

1886年の『善悪の彼岸』第146節です。

「事実はなく、解釈だけがある」は本当にニーチェの言葉ですか?

生前の著作ではなく、1886年から1887年ごろの遺稿に書かれた言葉です。

ニーチェは「人生に意味はない」と言ったのですか?

そう言い切った言葉ではなく、絶対的な意味が失われた状態を「ニヒリズム」と呼び、それを乗り越えて自分で価値をつくることを説きました。

ニーチェの名言まとめ

ニーチェの名言はネット上の定番表現を無条件に本人の言葉とせず、著書・講演・書簡・インタビューなど確認できる出典を優先し、背景まで読むことで考え方を正確につかめます。

原典にあたると、「愛せなければ通過せよ」のように、よく知られた意味とは違う背景を持つ言葉もあります。

意訳本の言い回しや、本人の著作にない言葉が広まっている例もあります。

持ち帰りたい一言を選ぶなら、「私を殺さないものは、私を強くする」です。

気になった言葉は、書名と節を手がかりに、原典の前後の文脈ごと味わってみてください。

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Kotonoha

名言好きの個人ブロガーです。 研究者ではありませんが、ひとつの言葉について「誰が」「いつ」「どの場面で」語ったのかを確かめてから記事にしています。出典をたどれない言葉は、どれだけ有名でも「確認できない」と書きます。 アニメのセリフから偉人の言葉まで、背景ごと味わえる形でお届けします。

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