福沢諭吉の「天は人の上に人を造らず」や、1981年のテレビCMで広まった岡本太郎の「芸術は爆発だ」は、日本の偉人の名言としてよく知られています。
ただ、「我以外皆我師」が宮本武蔵ではなく作家の吉川英治の言葉であるように、別の人物の言葉が有名な偉人の名言として紹介されているものもあります。
日本の偉人の名言は、短い言葉だけでなく、どの本や記録に残る言葉か、どの時代に語られた言葉かまで確かめると、日本人が大切にしてきた生き方と、言葉の本当の意味がよく伝わります。
この記事では、日本の偉人の名言を、短い名言・時代別の名言・座右の銘にしたい言葉に分けて出典つきで紹介し、別の人の言葉なのに広まった名言まで解説します。
この記事のポイント
- 「初心忘るべからず」は世阿弥が1424年の『花鏡』に書いた言葉
- 「芸術は爆発だ」は1981年のテレビCMで広まった岡本太郎の言葉
- 「心に欲なき時は義理を行う」は、徳川光圀ではなく上杉謙信の家訓と重なる
- 「我以外皆我師」は宮本武蔵ではなく、作家の吉川英治の言葉
日本の偉人の名言一覧
この記事で紹介する主な日本人の名言を、人物と時代つきで一覧にします。
| 名言 | 人物 | 時代 |
|---|---|---|
| 初心忘るべからず | 世阿弥 | 室町時代 |
| 人は城、人は石垣、人は堀 | 武田信玄 | 戦国時代 |
| 千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を練とす | 宮本武蔵 | 江戸時代 |
| 小を積みて大を為す | 二宮尊徳 | 江戸時代 |
| 天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず | 福沢諭吉 | 明治時代 |
| 世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない | 宮沢賢治 | 大正〜昭和 |
| 芸術は爆発だ | 岡本太郎 | 昭和 |
日本の名言の出典の確かめ方
日本の偉人の名言は、本人の著作や手紙、同じ時代の人が書いた記録などに残っている言葉かどうかで、確かさが大きく変わります。
戦国武将や江戸時代の人物の言葉は、後の時代にまとめられた軍学書や言行録に残っているものが多く、そうした本の成り立ちまで知っておくと、名言の読み方が深まります。
一方で、ネットの名言集には出典が書かれていない言葉も多いため、気になった言葉は、もとの本や記念館の資料で確かめるのがおすすめです。
仕事の場で使われる言葉の由来を調べた例として、「段取り八分仕事二分」の意味と由来を解説した記事もあります。
「芸術は爆発だ」の岡本太郎の考え方を本人の言葉で読むなら、自分らしく生きるための言葉がつまった『自分の中に毒を持て』がおすすめです。
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日本人の短い名言
日本の名言には、短い言葉で生き方の要点をまっすぐ伝えるものが多くあります。
初心忘るべからず(世阿弥)
能を大成した世阿弥が、1424年の芸論書『花鏡』に書いた言葉で、もとは「初心不可忘」と書かれています。
始めたころの気持ちを忘れるな、という意味で知られていますが、もとは若いころの未熟さや、年齢ごとの未熟な段階を忘れずに芸を磨き続けよ、という教えです。
芸術は爆発だ(岡本太郎)
芸術家の岡本太郎が、1981年に放送された日立マクセルのビデオテープのテレビCMで語ったことで、広く知られるようになった言葉です(参考:岡本太郎記念館)。
ここでの「爆発」は物が壊れることではなく、命が全身で燃え上がるように、自分のすべてを外にひらききることを指していると、岡本太郎自身が語っています。
小を積みて大を為す(二宮尊徳)
江戸時代の農政家・二宮尊徳の教えで、弟子がまとめた『二宮翁夜話』に記されている考え方です。
小さなことを積み重ねることで大きなことが成し遂げられる、という意味で、「積小為大」という四字熟語としても知られています。
ほかの短い言葉は、短い偉人の名言を紹介した記事でも取り上げています。
時代別の日本の名言
日本の名言を時代順にたどると、それぞれの時代の人たちが何を大切にしていたかがよくわかります。
よき細工は、少し鈍き刀を使ふ(吉田兼好)
鎌倉時代の終わりごろに書かれた随筆『徒然草』の第229段の言葉です。
腕のいい職人は、少し切れ味の鈍い刀を使う、という意味で、道具の鋭さに頼らず、腕前で仕事をする名人の心得を伝えています。
人は城、人は石垣、人は堀(武田信玄)
戦国武将・武田信玄の言葉として、武田家の軍学をまとめた『甲陽軍鑑』に伝わる歌の一節です。
城や石垣よりも、人こそが国を守る力になる、という意味で、人を大切にする組織づくりの言葉として、今もよく引用されます。
是非に及ばず(織田信長)
1582年の本能寺の変で、家臣の明智光秀の謀反を知った織田信長が言ったと、家臣の太田牛一が書いた『信長公記』に記されている言葉です。
あれこれ言っても仕方がない、という意味で、最期まで状況を受け止めて動こうとした信長の姿が伝わります。
千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を練とす(宮本武蔵)
剣豪・宮本武蔵が、1645年ごろに書いた兵法書『五輪書』の言葉です。
千日の稽古で鍛え、万日の稽古で練り上げる、という意味で、「鍛錬」という言葉の由来として紹介されることもあります。
松の事は松に習へ(松尾芭蕉)
俳人・松尾芭蕉の教えとして、弟子の服部土芳がまとめた俳論書『三冊子』に記されている言葉です。
松のことは松から学べ、という意味で、自分の思い込みを離れて、ものそのものに向き合うことの大切さを説いています。
世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない(宮沢賢治)
詩人・童話作家の宮沢賢治が、1926年ごろに書いた『農民芸術概論綱要』の言葉です。
自分ひとりの幸せではなく、みんなの幸せを願い続けた賢治の考え方が、まっすぐ表れた言葉として知られています。
戦国武将の言葉は、武田信玄の名言を解説した記事でもくわしく紹介しています。
座右の銘にしたい日本人の名言
生き方の指針として、座右の銘に選ばれることが多い日本人の名言もあります。
天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず(福沢諭吉)
1872年に出版された『学問のすゝめ』の冒頭の言葉で、「と言えり」と続き、そう言われている、という引用の形になっています。
人は平等に生まれるが、学ぶかどうかで差がつく、という本の主張とあわせて読むと、学び続けることの大切さを伝える言葉だとわかります。
命もいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は始末に困るもの(西郷隆盛)
西郷隆盛の教えを、のちに旧庄内藩の人たちがまとめた『南洲翁遺訓』に記されている言葉です。
命も名誉も地位もお金も求めない人は扱いにくいが、そういう人でなければ国の大きな仕事は成し遂げられない、と続き、私心を捨てる大切さを説いています。
しあわせはいつも じぶんのこころがきめる(相田みつを)
書家・詩人の相田みつをの作品で、幸せかどうかは自分の心が決める、という意味の言葉です。
短くやさしい言葉で、つらいときにも自分の心の持ち方を見直させてくれる言葉として、多くの人の座右の銘になっています。
相田みつをの言葉は、相田みつをの名言を解説した記事でもくわしく紹介しています。
別の人の言葉なのに広まった日本の名言
日本の偉人の名言として紹介される言葉の中には、別の人の言葉や、出典が確かめられないものもあります。
「心に欲なき時は義理を行う」(徳川光圀)
水戸黄門で知られる徳川光圀の言葉として紹介されることがありますが、上杉謙信の家訓として伝わる「宝在心」の言葉と同じ内容です。
光圀本人の言葉として確かめられる記録はなく、別の人物の教えが光圀の名言として広まったものと考えられます。
「夢なき者に成功なし」(吉田松陰)
吉田松陰の言葉として広まっていますが、松陰の著作や手紙には見当たりません。
渋沢栄一の言葉として伝わる「夢七訓」とよく似た内容で、それが松陰の言葉として紹介されるようになったと考えられます。
渋沢栄一の言葉の出どころは、渋沢栄一の名言を解説した記事でくわしく紹介しています。
「我以外皆我師」(宮本武蔵)
宮本武蔵の言葉として紹介されることがありますが、『五輪書』には見当たらず、作家の吉川英治の言葉として知られています。
吉川英治の小説『宮本武蔵』の印象が強いため、武蔵本人の言葉として広まったと考えられます。
「歩け、歩け」(伊能忠敬)
日本中を歩いて地図を作った伊能忠敬の言葉として紹介されますが、本人が言った記録は確かめられていません。
日本の偉人の名言に関するよくある質問
日本人の短い名言は?
世阿弥の「初心忘るべからず」や、岡本太郎の「芸術は爆発だ」が、短くて有名な言葉です。
心に響く日本人の名言は?
宮沢賢治の「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」や、相田みつをの「しあわせはいつも じぶんのこころがきめる」がよく挙げられます。
「芸術は爆発だ」はいつの言葉ですか?
1981年に放送された日立マクセルのテレビCMで、岡本太郎が語ったことで広く知られるようになりました。
「我以外皆我師」は宮本武蔵の言葉ですか?
『五輪書』には見当たらず、作家の吉川英治の言葉として知られています。
日本の偉人の名言まとめ
日本の偉人の名言は、短い言葉だけでなく、どの本や記録に残る言葉か、どの時代に語られた言葉かまで確かめると、日本人が大切にしてきた生き方と、言葉の本当の意味がよく伝わります。
世阿弥や武田信玄、宮本武蔵、福沢諭吉、岡本太郎の言葉には、それぞれの時代を生きた人たちの、仕事や人生への向き合い方が表れています。
一方で、別の人物の言葉や、出典が見つからない言葉が、有名な偉人の名言として広まった例もあります。
持ち帰りたい一言を選ぶなら、世阿弥の「初心忘るべからず」です。
気になった言葉は、もとの本や記念館の資料にあたって、前後の文章ごと味わってみてください。