「段取り八分、仕事二分」は「だんどりはちぶ、しごとにぶ」と読み、特定の人物の言葉ではなく、職人や現場で語り継がれてきた言葉です。
ただ、段取り8割の名言として紹介される言葉には、もとの言い回しや読み方があいまいなまま広まっているものや、誰の言葉か確かめられないものも混ざっています。
段取り8割の名言は、言葉の意味だけでなく、読み方や由来、誰がどこで語った言葉かまで確かめると、準備がなぜ仕事の結果を大きく左右するのかがよくわかります。
「段取り」の語源には歌舞伎説と石段説がありますがどちらも定説ではなく、イチロー選手の準備の言葉は2002年の雑誌『Number』541号に載ったものです。
この記事のポイント
- 「段取り八分、仕事二分」は「だんどりはちぶ、しごとにぶ」と読む
- 特定の人物の言葉ではなく、職人や現場で語り継がれてきた言葉
- 「段取り」の語源には歌舞伎説と石段説があるが、どちらも定説ではない
- イチロー選手の準備の言葉は、2002年の雑誌『Number』541号に載った言葉
段取り8割の名言一覧
この記事で紹介する主な言葉を、発言者と出典つきで一覧にします。
| 言葉 | 発言者 | 出典 |
|---|---|---|
| 段取り八分、仕事二分 | 不明(職人・現場の言葉) | 古くからの言い習わし |
| 勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求む | 孫子 | 『孫子』軍形篇 |
| “準備”というのは、言い訳の材料となり得るものを排除していく | イチロー | 雑誌『Number』541号(2002年) |
| Plans are worthless, but planning is everything. | アイゼンハワー | 1957年11月の演説 |
段取り八分仕事二分の意味と読み方
まずは、段取り8割の名言のもとになっている「段取り八分、仕事二分」の意味と読み方を確かめます。
段取り八分仕事二分の意味
仕事の出来は、取りかかる前の準備や計画でおよそ8割が決まり、実際の作業が占める割合は残りの2割ほどにすぎない、という意味の言葉です。
準備に時間の8割をかけなさい、という時間配分の決まりではなく、事前の準備がそれだけ結果を大きく左右する、という心構えを数字で表した言葉と受け取るのが自然です。
段取り八分の読み方
「段取り八分、仕事二分」は、「だんどりはちぶ、しごとにぶ」と読みます。
ここでの「分(ぶ)」は割合を表す単位で、十分(じゅうぶ)のうちの八分、つまり8割という意味です。
「腹八分目」の「八分」と同じ使い方で、「はっぷん」と読むと時間の意味になってしまうので注意が必要です。
段取り8割・準備8割との違い
「段取り8割」「準備8割」「段取り八分」は、どれも「段取り八分、仕事二分」を短くしたり、数字の書き方を変えたりした言い方で、意味はほとんど同じです。
ことわざ辞典に載るような固い言い回しではなく、職場で口伝えに使われてきた言葉なので、言い方に少しずつ違いがあります。
段取り八分の由来と語源
「段取り」という言葉そのものの成り立ちには、よく知られた説が2つあります。
歌舞伎の楽屋言葉に由来する説
芝居の物語の区切りを「段」と呼び、筋の運びや場面の組み立てを「段取り」と呼んだことから、物事を進める順序や準備を指すようになった、という説です。
国語辞典でも、「段取り」には芝居の筋の組み立てという意味と、物事を進める順序や準備という意味の2つが載っていて、芝居との関わりがうかがえます。
石段づくりに由来する説
坂道に石段を作るとき、傾きに合わせて段の数や高さを決めることを「段を取る」と言い、その出来の良しあしを「段取りが良い、悪い」と言ったことに由来する、という説もあります。
どちらの説も広く紹介されていますが、決め手になる古い記録は見つかっておらず、定説とまでは言えません。
段取り八分は誰の言葉か
段取り8割の名言は、誰か有名な人の言葉として紹介されることもありますが、もとの言葉の作者はわかっていません。
職人や現場で語り継がれてきた言葉
「段取り八分、仕事二分」は、大工などの職人や、製造業、料理の現場で、仕事を教えるときに使われてきた言い習わしとして伝わっています。
特定の人物が最初に言った、と示す確かな資料は見当たらないため、名言として引用するときは「職人の言葉」「現場の言葉」として紹介するのが正確です。
トヨタの「段取り替え」との関係
「段取り八分 トヨタ」と検索されることもありますが、トヨタ生産方式で使われるのは「段取り替え」という言葉で、意味が少し違います。
段取り替えは、ある製品の加工を終えて、次の製品の生産に切り替えるための金型や工具の交換などの作業のことです(参考:中小企業基盤整備機構 J-Net21「ムダのない段取り改善の方法」)。
機械を止めずにできる準備を先に済ませておく「外段取り」を増やす考え方は、段取り八分の教えとよく重なりますが、トヨタが「段取り八分」という言葉を生んだという記録は見つかっていません。
準備と段取りについての名言
段取り8割の考え方は、昔から多くの人が、それぞれの言葉で語ってきました。
勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求む(孫子)
中国の兵法書『孫子』の軍形篇にある言葉で、勝つ軍は戦う前に勝てる態勢を整えてから戦いに臨み、負ける軍は戦いを始めてから勝つ方法を探す、という意味です。
「勝敗は戦う前に決まっている」という言い方で紹介されることが多く、段取り八分の考え方を、2,000年以上前に言い表した言葉といえます。
“準備”というのは、言い訳の材料となり得るものを排除していく(イチロー)
2002年1月発行の雑誌『Number』541号に載った、イチロー選手の言葉です(参考:Number Web「イチローの名言」)。
そのために考えられることをすべてこなしていく、という意味の言葉が続き、試合の結果に後悔を残さないための準備の考え方が伝わります。
準備の大切さをイチロー選手の言葉から学ぶなら、児玉光雄さんの『イチロー流 準備の極意』がおすすめです。
\ 結果を出す人の準備の習慣を知るなら /
努力を続けた人の言葉は、努力の名言を紹介した記事でも取り上げています。
Plans are worthless, but planning is everything.(アイゼンハワー)
アメリカのアイゼンハワー大統領が、1957年11月の演説で語った言葉で、計画そのものは役に立たなくなっても、計画を立てることにはすべての価値がある、という意味です。
思いどおりに進まないことを前提に、あらかじめ考え抜いておくことが大切だ、という考え方は、段取り八分とよく似ています。
「木を切るのに6時間あれば、4時間は斧を研ぐ」は誤って広まった言葉
リンカーンの言葉として有名ですが、リンカーンが言った記録は見つかっておらず、英語圏の名言の出典を調べる研究でも、後から本人の言葉にされたと考えられています。
「8割方」「八分通り」の意味と言い換え
段取り8割と一緒に、「8割方」や「八分通り」という言葉の意味を調べる人もいます。
8割方・八分通りの意味
「8割方」「八分通り」は、どちらも「ほぼ8割くらい」「大部分」という意味で、「工事は八分通り終わった」のように使います。
言い換えの例
ビジネスの場では、「大方」「ほぼ」「大部分」「おおむね」などに言い換えると、やわらかい印象で伝えられます。
段取り8割の名言に関するよくある質問
段取り八分仕事二分の読み方は?
「だんどりはちぶ、しごとにぶ」と読みます。
段取り八分は誰の言葉ですか?
特定の人物の言葉ではなく、職人や現場で語り継がれてきた言い習わしです。
段取り八分はトヨタの言葉ですか?
トヨタ生産方式で使われるのは「段取り替え」という言葉で、「段取り八分」をトヨタが生んだという記録は見つかっていません。
準備8割の名言は?
孫子の「勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求む」や、イチロー選手の「“準備”というのは、言い訳の材料となり得るものを排除していく」がよく知られています。
段取り8割の名言まとめ
段取り8割の名言は、言葉の意味だけでなく、読み方や由来、誰がどこで語った言葉かまで確かめると、準備がなぜ仕事の結果を大きく左右するのかがよくわかります。
「段取り八分、仕事二分」は、特定の人物ではなく、職人や現場の人たちが経験から語り継いできた言葉です。
孫子やイチロー選手の言葉にも、取りかかる前の準備で結果の多くが決まる、という同じ考え方が表れています。
持ち帰りたい一言を選ぶなら、「段取り八分、仕事二分」です。
大事な仕事の前には、この言葉を思い出して、始める前の準備にしっかり時間をかけてみてください。