ウォルト・ディズニーの名言を探すと、「夢見ることができれば、それは実現できる」のような前向きな言葉がたくさん出てきます。
ところが、よく知られた言葉の中には、ウォルト本人が言ったという記録のないものが含まれています。
ウォルトの考えを正しく知るには、1955年のディズニーランド開園スピーチや、生前のテレビ番組・取材記事など、記録が残っている言葉から読むのが確かです。
名言は出典を確かめられるものだけを英語の原文と背景つきで並べ、本人の言葉として広まった誤引用も分けて示しています。
この記事のポイント
- 確かな言葉は開園スピーチやテレビ番組、生前の取材記事に残る
- 「すべては1匹のネズミから始まった」は1954年のテレビ番組の言葉
- 「夢見ることができれば」はディズニーのイマジニアが書いた言葉
- 「夢をかなえる4つのC」は記者の文章が本人の言葉と誤解されたもの
ウォルト・ディズニーはどんな人か
ウォルト・ディズニーは、1901年12月5日にアメリカのシカゴで生まれた、アニメーション映画の制作者で実業家です。
若い頃にカンザスシティで立ち上げたアニメ制作会社ラフォグラムを倒産させたあと、ハリウッドに移って兄ロイとともに新しいスタジオを始めました。
1928年にミッキーマウスが登場する『蒸気船ウィリー』を公開し、1937年には長編アニメーション映画『白雪姫』を世に送り出しています。
1955年にはカリフォルニア州アナハイムにディズニーランドを開園し、1966年12月15日に亡くなりました。
ウォルトの言葉が生まれた背景まで知りたい場合は、伝記を読むと理解が深まります。
ニール・ゲイブラーの『創造の狂気 ウォルト・ディズニー』(中谷和男訳、ダイヤモンド社、2007年)は、ディズニー社の資料をもとに生涯を詳しく描いた伝記です。
倒産や権利の喪失、スタジオの経営難など、名言の背景にある出来事を順を追って読めます。
\ 名言の背景を伝記で /
ほかの偉人の言葉もあわせて読みたい方は、偉人の名言を出典と背景つきで紹介した記事も参考にしてください。
出典が確かなウォルト・ディズニーの名言一覧
まずは、この記事で紹介するウォルト本人の言葉を、英語の原文と出典つきで一覧にします。
和訳は、原文の意味が伝わるように当サイトで訳したものです。
| 名言(和訳) | 英語の原文 | 出典 |
|---|---|---|
| すべては1匹のネズミから始まったということを、決して見失わないでほしい | we never lose sight of one thing: that it was all started by a mouse | テレビ番組『ディズニーランド』(1954年10月27日) |
| この幸せな場所に来てくれたすべての人へ、ようこそ | To all who come to this happy place: Welcome | ディズニーランド開園式(1955年7月17日) |
| ディズニーランドが完成することはありません | Disneyland will never be completed | ディズニーランド開園時の言葉 |
| なぜ心配するのですか?最善を尽くしたなら、心配しても何もよくなりません | Why worry? If you've done the very best you can, worrying won't make it any better. | 雑誌『The American Magazine』(1955年8月号) |
| 若いうちに手痛い失敗をするのは大切なことだと思います | I think it's important to have a good hard failure when you're young. | ラフォグラム社の倒産を振り返った言葉 |
| ひどい仕打ちが、あなたにとって最良の出来事になるかもしれません | a kick in the teeth may be the best thing in the world for you | 『The Story of Walt Disney』(1957年) |
| 始めるには、しゃべるのをやめて行動することだと分かりました | I found the way to get started was to quit talking and begin doing it | ヘッダ・ホッパーによるインタビュー(1957年7月) |
ここに並べたのは、発言の日時や場面、載っている本や雑誌を確かめられる言葉だけです。
映画のキャラクターのセリフはウォルト本人の言葉ではないため、この記事では扱いません。
ディズニープリンセスのセリフを読みたい方は、ディズニープリンセスの名言を紹介した記事をご覧ください。
ディズニーランドと原点についての言葉
ウォルトの言葉の中でも記録がはっきり残っているのが、ディズニーランドの誕生に関わる言葉です。
ここでは、開園前のテレビ番組と、開園の日に語られた言葉を紹介します。
すべては1匹のネズミから始まった
1954年10月27日、ウォルトは自ら案内役を務めるテレビ番組『ディズニーランド』の第1回で、スタジオのこれまでの歩みを紹介しました。
その中で「私たちの唯一の願いは、すべてが1匹のネズミから始まったということを決して見失わないことです」と語っています。
映画やテレビ、テーマパークへと事業を広げても、原点のミッキーマウスを大切にしようという思いが込められた言葉です。
日本では「すべては1匹のネズミから始まった」という短い形で知られています。
この幸せな場所に来てくれたすべての人へ
1955年7月17日のディズニーランド開園式で、ウォルトは「この幸せな場所に来てくれたすべての人へ、ようこそ。ディズニーランドはあなたの国です」で始まる献辞を読み上げました。
献辞では、年配の人は過去の懐かしい思い出を、若い人は未来への挑戦と希望を味わえる場所だと語られています。
この言葉は、今もディズニーランドの入口近くにある記念の銘板に刻まれています。
ディズニーランドが完成することはない
ウォルトは開園にあたって、「ディズニーランドが完成することはありません。世界に想像力が残っている限り、成長し続けるでしょう」と語りました(出典:D23)。
一度つくって終わりではなく、新しいアトラクションを加えながら変わり続けるという考え方です。
実際にディズニーランドは開園から70年以上がたった今も、新しいアトラクションが加えられています。
失敗と挑戦についての言葉
ウォルトは若い頃に会社の倒産や、自分で生み出したキャラクターの権利を失うといった挫折を経験しています。
ここでは、そうした経験を振り返った言葉を紹介します。
若いうちに手痛い失敗をするのは大切
カンザスシティでラフォグラム社を倒産させたウォルトは、ハリウッド行きの列車に乗った日を振り返り、「私は失敗した」と認めたうえで「若いうちに手痛い失敗をするのは大切なことだと思います」と語っています(出典:ウォルト・ディズニー・ファミリー博物館)。
同じ回想では、列車に乗った日は「ただ自由で幸せだった」とも述べています。
ハリウッドに着いたときの所持金は40ドルだったとされますが、ウォルトはすぐに新しい契約を取り、兄とスタジオを立ち上げました。
ひどい仕打ちが最良の出来事になるかもしれない
娘のダイアン・ディズニー・ミラーがまとめた1957年の伝記『The Story of Walt Disney』には、次の言葉が収められています。
「そのときは気づかないかもしれませんが、ひどい仕打ちが、あなたにとって最良の出来事になるかもしれません」
この直前でウォルトは、物事がうまくいかないときのほうが力を発揮でき、順調なときほど何かが崩れそうで不安になると話しています。
逆境をただ耐えるものではなく、自分を強くするきっかけとして受け止める姿勢が表れた言葉です。
始めるには、しゃべるのをやめて行動すること
「何かを始めるには、しゃべるのをやめて行動することだ」という言葉は、1957年7月に映画記者ヘッダ・ホッパーが行ったインタビューに出てきます。
ウォルトは、事業を始めた頃は資金がなく、銀行からお金を借りるのに苦労したことを振り返り、「始めるには、しゃべるのをやめて行動することだと分かりました」と語りました。
今では一般的な行動のすすめとして紹介されますが、もとは資金集めに苦労した体験から出た言葉です。
1955年の雑誌取材で語った言葉
1955年8月、記者ドン・エディは雑誌『The American Magazine』にウォルトを取材した記事を書きました。
この記事には、ウォルト本人が語った言葉と、記者の感想や分析の両方が含まれています。
なぜ心配するのですか
利益のことを心配しないのかと聞かれたウォルトは、肩をすくめて「なぜ心配するのですか?最善を尽くしたなら、心配しても何もよくなりません」と答えています。
そのあとに「それに、人生のたいていのことは、長い目で見れば帳尻が合うものです」と続けました。
できることをやり切ったら、結果を気に病みすぎないという考え方が表れた言葉です。
働くことです
記者から「あなたの成功の秘密は何ですか、夢をかなえる方法を教えてほしい」と問われたウォルトは、工房で旋盤に向かったまま答えました。
その答えは、「働くことです。私がずっとそうしてきたように、働くことです」という短いものでした。
夢を語るより、手を動かし続けることを大切にしたウォルトらしい答えです。
ウォルトの言葉ではない・出典が確認できない名言
ウォルト・ディズニーの名言として広まっている言葉の中には、本人の言葉ではないと分かっているものや、発言の記録が見つからないものがあります。
よく見かける言葉を取り上げ、実際の出どころを紹介します。
「夢見ることができれば、それは実現できる」
「If you can dream it, you can do it.」は、ウォルトの代表的な名言として紹介されることの多い言葉です。
しかし、ディズニーの公式アーキビストだったデイヴ・スミスは、これはウォルトの言葉ではないと答えています(出典:D23)。
実際には、イマジニアのトム・フィッツジェラルドが、エプコットのアトラクション「ホライズンズ」のために書いた言葉です。
ホライズンズは1983年に開業したアトラクションで、ウォルトが亡くなってから17年後のことでした。
「夢をかなえる秘訣は4つのC」
「夢をかなえる秘訣は、好奇心・自信・勇気・継続の4つのCにまとめられる」という言葉も、ウォルトの名言として広く知られています。
この言葉は、1955年8月の『The American Magazine』の記事で、記者ドン・エディが自分の考えとして書いた文章です。
エディがこの4つのCの考えをウォルトに伝えて成功の秘密を尋ねたところ、返ってきたのは前の見出しで紹介した「働くことです」という答えでした。
記事にはウォルト本人の発言も含まれていたため、記者の文章まで本人の言葉だと取り違えられて広まったと考えられています。
「夢を追い求める勇気さえあれば、すべての夢はかなう」
「All our dreams can come true, if we have the courage to pursue them.」も、ウォルトの名言としてよく使われる言葉です。
ところが、ウォルトがいつ、どこでこの言葉を語ったのかを示す記録は見つかっていません。
ウォルトの考えに近い内容ではありますが、本人の言葉として紹介するときは出典不明であることを知っておくと安心です。
映画のセリフがウォルトの言葉とされる例
ディズニー映画のキャラクターのセリフが、ウォルトの言葉として紹介されることもあります。
- 逆境の中で咲く花こそ、最も貴重で美しい(『ムーラン』の皇帝のセリフ)
- 過去は痛い、でもそこから逃げることも学ぶこともできる(『ライオン・キング』のラフィキのセリフ)
どちらもウォルトが亡くなったあとに公開された映画のセリフなので、ウォルト本人の言葉ではありません。
ウォルト・ディズニーの名言に関するよくある質問
「If you can dream it, you can do it.」はウォルト・ディズニーの言葉ですか?
ウォルトの言葉ではありません。
ディズニーのイマジニアがエプコットのアトラクションのために書いた言葉で、ウォルトが亡くなったあとに生まれています。
ウォルト・ディズニーの短い名言はありますか?
「Disneyland will never be completed.(ディズニーランドが完成することはありません)」は、短く出典もはっきりした言葉です。
開園にあたって語られた言葉で、変わり続けることを大切にする考え方が表れています。
仕事に役立つウォルト・ディズニーの名言はどれですか?
1957年のインタビューで語った「始めるには、しゃべるのをやめて行動すること」がよく引用されます。
資金集めに苦労した経験から出た言葉なので、背景とあわせて紹介すると説得力が増します。
ウォルト・ディズニーの名言が本物かどうかはどう見分ければいいですか?
いつ、どこで語られた言葉かが示されているかを確認します。
ウォルトが亡くなった1966年より後に公開された映画やアトラクションの言葉は、本人の言葉ではありません。
ウォルト・ディズニーの名言のまとめ
ウォルト・ディズニーの名言として広まっている言葉には、本人の言葉ではないものや、出典が確認できないものが含まれています。
本人の考えを知りたいときは、開園スピーチやテレビ番組、生前の取材記事など、記録が残っている言葉から読むのが確かです。
一つだけ持ち帰るなら、夢をかなえる秘訣を聞かれて答えた「働くことです」という言葉です。
大きな夢を語る前に、今日の仕事に手を動かすことから始めてみてください。