ヘレン・ケラーの名言として広く知られているのが、「世界で最も素晴らしく、最も美しいものは、心で感じなければならない」という言葉です。
一方で、ヘレン・ケラーの言葉として広まっている名言の中には、別の人の言葉や、出典がわからない言葉も少なくありません。
ヘレン・ケラーの名言は、ネットの定番の言い回しをそのまま本人の言葉とせず、著書や手紙など確かめられる出典から背景まで読むことで、考え方を正確につかめます。
名言は英語の原文と出典を確かめられるものだけをテーマ別に並べ、サリバン先生との「water」の場面と、誤って広まった言葉も取り上げています。
この記事のポイント
- 「最も美しいものは心で感じる」は1891年の手紙に書かれた言葉
- 「人生は、思い切った冒険か、無か」は1940年の著書『Let Us Have Faith』の言葉
- 「顔をいつも太陽のほうに向けて」は、もとはイギリスの詩人の詩に由来する
- 「幸せのドア」の言葉は、すでにあった格言をもとにしている
ヘレン・ケラーの名言一覧
この記事で紹介する主な名言を、英語の原文と出典つきで一覧にします。
| 名言 | 英語の原文 | 出典 |
|---|---|---|
| 最も美しいものは、心で感じるもの | The best and most beautiful things in the world cannot be seen nor even touched, but just felt in the heart. | 1891年の手紙(『The Story of My Life』収録) |
| 人生は、思い切った冒険か、無か | Life is either a daring adventure, or nothing. | 『Let Us Have Faith』(1940年) |
| 世の中は苦しみに満ちているが、それを乗り越えることにも満ちている | Although the world is full of suffering, it is full also of the overcoming of it. | 『Optimism』(1903年) |
| 悲観主義者が星の秘密を発見したことはない | No pessimist ever discovered the secrets of the stars… | 『Optimism』(1903年) |
| 文学は私の理想郷です | Literature is my Utopia. | 『The Story of My Life』(1903年) |
ヘレン・ケラーとは
ヘレン・ケラーは、1880年にアメリカのアラバマ州で生まれ、1968年に亡くなった教育者・社会活動家です。
生後19か月のときに高熱を伴う病気にかかり、目と耳が不自由になりましたが、家庭教師のアン・サリバンとの出会いをきっかけに言葉を学びました。
1904年にラドクリフ・カレッジを優等で卒業し、目と耳の両方が不自由な人として初めて学士号を取った人物として知られています。
その後は著作や講演を通して、障害のある人の教育や福祉のために活動し、日本にも1937年・1948年・1955年の3回訪れました。
ヘレン・ケラーの言葉は、自伝を読むと、生まれた背景ごと味わえます。
『The Story of My Life』は、小倉慶郎さんの訳で『奇跡の人 ヘレン・ケラー自伝』として新潮文庫から出ています。
\ ヘレン・ケラーの言葉を自伝で読む /
希望と楽観についての名言
ヘレン・ケラーの楽観主義は、苦しみを知らない明るさではなく、苦しみを知ったうえで光を選ぶという強い意志に支えられています。
世の中は苦しみに満ちているが、それを乗り越えることにも満ちている
1903年のエッセイ『Optimism(楽観主義)』に書かれた「Although the world is full of suffering, it is full also of the overcoming of it.」という言葉です(出典:Project Gutenberg)。
世の中のつらさから目をそらすのではなく、それを乗り越えてきた人間の力を信じるという、ヘレン・ケラーの楽観主義の土台になっている言葉です。
悲観主義者が星の秘密を発見したことはない
同じ『Optimism』の中の「No pessimist ever discovered the secrets of the stars, or sailed to an uncharted land」で始まる言葉です。
悲観主義者が星の秘密を見つけたり、地図にない土地へ船出したりしたことはない、と続き、前向きな気持ちこそが新しい世界を切り開くと伝えています。
挑戦と勇気についての名言
ヘレン・ケラーは、安全な場所にとどまるより、恐れずに挑戦することの大切さを何度も語っています。
人生は、思い切った冒険か、無か
1940年の著書『Let Us Have Faith』に書かれた「Life is either a daring adventure, or nothing.」という言葉です。
同じ文章の中で「安全とはほとんど迷信にすぎない」とも書き、危険を避け続けることが、かえって人生を貧しくすると語っています。
日本では「人生はどちらかです。勇気をもって挑むか、棒にふるか」という訳でも知られています。
サリバン先生と「water」の場面
ヘレン・ケラーの言葉の原点には、家庭教師アン・サリバンとの出会いがあります。
言葉の神秘が明かされた瞬間
1887年、サリバン先生は井戸のポンプから流れる水をヘレンの片方の手に当てながら、もう片方の手に「w-a-t-e-r」と指で綴りました。
自伝『The Story of My Life』(1903年)の第4章で、ヘレンはこのとき「言葉の神秘が私に明かされた」と振り返っています。
すべてのものに名前があると知ったこの出来事は、映画や舞台『奇跡の人』の名場面としても知られています。
文学は私の理想郷です
同じ自伝の中で、ヘレンは「literature is my Utopia」と書いています。
本の世界では障害があることで締め出されることはない、と続き、読書が彼女にとってどれほど大きな支えだったかが伝わってきます。
「最も美しいものは心で感じる」の本当の出典
ヘレン・ケラーの代表的な名言として知られるこの言葉は、自伝の本文ではなく、少女時代の手紙の中に書かれています。
1891年、フィリップス・ブルックス牧師への手紙
1891年6月8日、10歳のヘレンが牧師のフィリップス・ブルックスに宛てた手紙に、「the best and most beautiful things in the world cannot be seen nor even touched, but just felt in the heart」という一文があります(出典:Project Gutenberg)。
手紙では、先生がこのことを教えてくれたときにどれほどうれしかったかを伝えていて、サリバン先生から受け取った考えを、ヘレン自身の言葉で書き残したものだとわかります。
この手紙は、自伝『The Story of My Life』の手紙の章に収められています。
偉人のほかの名言もあわせて読みたい方は、偉人の名言集を解説した記事も読んでみてください。
ヘレン・ケラーの名言として誤って広まった言葉
ヘレン・ケラーの言葉として紹介される名言の中には、別の人の言葉や、出典がわからない言葉もあります。
顔をいつも太陽のほうに向けていて。影なんて見ていることはないわ
ヘレン・ケラーの名言として有名ですが、名言の出典を調べるQuote Investigatorによると、もとは1850年にイギリスの詩人チャールズ・スウェインが書いた詩に由来する言葉です。
その後、別の人の言葉として新聞に載るなどして広まり、ヘレン・ケラーの言葉として定着したとされています。
ひとつの幸せのドアが閉じる時、もうひとつのドアが開く
1929年の著書『We Bereaved』に出てくる言葉ですが、「一つのドアが閉まれば別のドアが開く」という格言は、それ以前から新聞などで紹介されていました。
ヘレン・ケラーは、すでにあった格言に「幸せ」という言葉を加えて、大切な人を亡くした人に向けて書いたと考えられています。
出典がわからない言葉
「元気を出しなさい。今日の失敗ではなく、明日訪れるかもしれない成功について考えるのです」や、「暗闇の中を友と歩くほうが、光の中を一人で歩くよりいい」も、ヘレン・ケラーの言葉として紹介されますが、本人の著作の中では確かめられていません。
ヘレン・ケラーの名言に関するよくある質問
「最も美しいものは心で感じる」の英語の原文は?
「The best and most beautiful things in the world cannot be seen nor even touched, but just felt in the heart.」です。
1891年にフィリップス・ブルックス牧師へ宛てた手紙の一文です。
ヘレン・ケラーの短い名言はありますか?
「Life is either a daring adventure, or nothing.(人生は、思い切った冒険か、無か)」が短く覚えやすい言葉です。
「顔を太陽に向けて」はヘレン・ケラーの言葉ですか?
ヘレン・ケラーの言葉として広まっていますが、もとは1850年のイギリスの詩人の詩に由来するとされています。
「water」の場面は何歳のときですか?
1887年、ヘレン・ケラーが6歳のときの出来事です。
自伝『The Story of My Life』の第4章に書かれています。
ヘレン・ケラーの名言まとめ
ヘレン・ケラーの名言は、ネットの定番の言い回しをそのまま本人の言葉とせず、著書や手紙など確かめられる出典から背景まで読むことで、考え方を正確につかめます。
苦しみを知ったうえで光を選ぶ楽観主義と、恐れずに挑戦する勇気が、彼女の言葉の根っこにあります。
「顔を太陽に向けて」のように、別の人の言葉が彼女の名言として広まった例もあります。
持ち帰りたい一言を選ぶなら、「Life is either a daring adventure, or nothing.(人生は、思い切った冒険か、無か)」です。
気になった言葉は、自伝で前後の文章ごと味わってみてください。