ボブ・マーリーの名言を探すと、「Love the life you live. Live the life you love.」のような英語の言葉がたくさん出てきます。
ところが、よく知られた英語の名言の多くは、本人が言ったという記録が見つかっていません。
ボブ・マーリーの考えを知るには、インタビューやステージでの発言など記録が残る言葉と、曲に込めたメッセージを分けて読むのが確かです。
載せているのは出典を確かめられるボブ・マーリーの言葉で、英語の原文と背景のほか、代表曲が何を歌ったのかと、本人の言葉ではないのに広まった名言も扱っています。
この記事のポイント
- 確かな言葉は1970年代のインタビューやステージでの発言に残る
- 「Redemption Song」の一節はマーカス・ガーベイの演説がもと
- 「雨を感じる人もいれば、ただ濡れる人もいる」は別人の言葉
- 「Love the life you live」など多くの英語名言は出典が見つからない
ボブ・マーリーはどんな人か
ボブ・マーリー(本名ロバート・ネスタ・マーリー)は、1945年2月6日にジャマイカのセント・アン教区ナイン・マイルズで生まれた、レゲエの音楽家です(出典:ボブ・マーリー公式サイト)。
首都キングストンの貧しい地区トレンチタウンで育ち、バンド「ウェイラーズ」とともにレゲエを世界に広めました。
ジャマイカで生まれた信仰運動ラスタファリを信じ、愛と平和、差別や貧しさへの抵抗を歌い続けています。
1981年5月11日に、がんのため36歳で亡くなり、1994年にはロックの殿堂入りを果たしました。
ほかの偉人の言葉もあわせて読みたい方は、偉人の名言を出典と背景つきで紹介した記事も参考にしてください。
インタビューで語った言葉
ボブ・マーリー本人の考えがよく分かるのが、インタビューでの受け答えです。
ジャマイカの話し言葉が混じった英語で、飾らずに語っているのが特徴です。
愛という言葉は、自分にとって神だ
1978年3月30日に掲載された、アイルランドの音楽誌「Hot Press」のインタビューで、ボブ・マーリーは愛についてこう語っています(出典:Hot Press)。
「To me the word love is God.(自分にとって、愛という言葉は神なんだ)」
ボブ・マーリーにとって愛は、恋愛の気持ちだけではなく、信仰とつながる大きなものだったことが分かる言葉です。
ラスタファリは文化ではなく、現実だ
1980年9月、アメリカのテレビ番組「Like It Is」のインタビューで、ボブ・マーリーはラスタファリについて「Rastafari not a culture, it's a reality.(ラスタファリは文化じゃない、現実なんだ)」と答えています。
ラスタファリを流行のスタイルとして見られることを退け、自分の生き方そのものだと伝えた言葉です。
自分の豊かさは命だ
1979年、オーストラリアのテレビ番組「60 Minutes」のインタビューで、財産を持つことで豊かになれるかと聞かれたボブ・マーリーは、こう答えたと伝えられています。
「My richness is Life, forever.(自分の豊かさは命なんだ、ずっと)」
世界的な成功を手にしたあとも、お金や物ではなく、生きていること自体を豊かさと考えていたことがうかがえます。
人類がともに暮らすのを見たい
1975年、ロンドンでのライブの翌日に受けたインタビューで、ボブ・マーリーは自分の望みについて、こう語ったとされています。
「I like to see mankind live together – black, white, Chinese, everyone.(人類が一緒に暮らすのを見たいんだ、黒人も白人も中国人も、みんなが)」
この言葉は、2012年のドキュメンタリー映画『Marley』でも使われています。
教育ではなく、インスピレーション
1992年のドキュメンタリー『Time Will Tell』に収められたインタビューで、ボブ・マーリーは「We don't have education, we have inspiration.(俺たちにあるのは教育じゃない、インスピレーションだ)」と語っています。
学校で教わる知識より、自分の内から湧いてくるものを信じるという、ボブ・マーリーらしい考え方です。
平和を願ったステージ
ボブ・マーリーの言葉に重みを与えているのが、政治の対立で揺れるジャマイカで、平和のために立ったステージです。
銃撃の2日後に立ったスマイル・ジャマイカ
1976年、ジャマイカでは二大政党の支持者どうしの争いが激しくなっていました。
対立を和らげるための無料コンサート「スマイル・ジャマイカ」を2日後に控えた12月3日、ボブ・マーリーはキングストンの自宅で銃撃され、けがを負います。
それでも12月5日、ボブ・マーリーは予定どおりステージに立ち、およそ90分の演奏をやり遂げました。
2人の政治家の手を取らせたワン・ラヴ・ピース・コンサート
1978年4月22日、キングストンの国立競技場で開かれた「ワン・ラヴ・ピース・コンサート」で、ボブ・マーリーは対立する2つの政党の党首を、演奏中のステージに呼び上げました。
そして、首相のマイケル・マンリーと野党党首のエドワード・シアガに、観客の前で握手をさせています。
このときボブ・マーリーは、何かを実現するにはみんなが一緒にならなければならないと語りかけたと伝えられています。
代表曲に込めたメッセージ
ボブ・マーリーの名言として紹介される言葉の多くは、実は曲の歌詞の一節です。
ここでは歌詞そのものは載せず、代表曲がいつ発表され、何を歌った曲なのかを紹介します。
| 曲名 | 発表年・収録作 | 何を歌った曲か |
|---|---|---|
| Judge Not | 1962年(最初のシングル) | 自分を省みずに他人を裁くことへの戒め |
| One Love | 1965年、1977年『Exodus』で再録音 | 人種や立場を越えて一つになろうという呼びかけ |
| Trenchtown Rock | 1971年 | 音楽が人の痛みを和らげてくれる力 |
| Get Up, Stand Up | 1973年『Burnin'』 | 自分の権利のために立ち上がり、あきらめないこと |
| No Woman, No Cry | 1974年『Natty Dread』 | トレンチタウンの日々を振り返り、女性を励ます歌 |
| War | 1976年『Rastaman Vibration』 | 人種差別がなくならない限り争いは続くという訴え |
| Three Little Birds | 1977年『Exodus』 | 心配しなくても大丈夫だという安心のメッセージ |
| Zimbabwe | 1979年『Survival』 | 自分たちの運命は自分たちで決めるというアフリカの独立への応援 |
| Redemption Song | 1980年『Uprising』 | 心の奴隷状態から自分を解放しようという呼びかけ |
曲の本当のメッセージを知りたいときは、名言の画像ではなく、曲そのものを聴いてみるのがいちばんです。
心に響く歌の言葉をほかにも探したい方は、心に響く名言の曲を集めた記事もあわせて読んでみてください。
「Redemption Song」のもとになった演説
1980年のアルバム『Uprising』に収められた「Redemption Song」の中心にある一節は、ジャマイカ出身の思想家マーカス・ガーベイの演説がもとになっています。
ガーベイは1937年10月1日、カナダのノバスコシア州シドニーで行った演説で、「他人が体を自由にすることはあっても、心を自由にできるのは自分たちだけだから、私たちは心の奴隷状態から自らを解放する」という趣旨を語りました(出典:The Canadian Encyclopedia)。
ボブ・マーリーはこの考えを歌に取り入れ、体の自由だけでなく心の自由を自分の手で取り戻そうと呼びかけました。
「War」のもとになった演説
1976年の「War」の歌詞は、エチオピア皇帝ハイレ・セラシエ1世が1963年10月4日に国連総会で行った演説の一部を、ほぼそのまま使っています。
ある人種が優れていて別の人種が劣っているという考えがなくならない限り、争いは続くという内容です。
ラスタファリで特別な存在とされるハイレ・セラシエの言葉を借りて、ボブ・マーリーは人種差別と戦争のつながりを訴えました。
代表曲をまとめて聴きたい方には、1984年に発売されたベストアルバム『Legend』があります。
\ 代表曲をまとめて聴く /
ボブ・マーリーの言葉ではない・出典が確認できない名言
ボブ・マーリーの名言として広まっている英語の言葉の中には、本人の言葉ではないと分かっているものや、出典が見つからないものがたくさんあります。
「雨を感じる人もいれば、ただ濡れるだけの人もいる」
「Some people feel the rain. Others just get wet.」は、ボブ・マーリーの言葉として特によく紹介される名言です。
しかし、名言の出典を調べているQuote Investigatorによると、確認できる最も古い例は1973年初めに放送された、アメリカのカントリー歌手ロジャー・ミラーのテレビ番組でした(出典:Quote Investigator)。
ボブ・マーリーの言葉として紹介されるようになったのは、2000年代後半からとされています。
「世界を悪くしようとする人たちは休まない」
銃撃のあともステージに立った理由として、「この世界を悪くしようとしている人たちは1日も休まない。どうして自分が休めるだろう」という言葉が紹介されることがあります。
実はこの言い回しは、2007年の映画『アイ・アム・レジェンド』で、ウィル・スミスが演じる主人公がボブ・マーリーの話を語るときのセリフです。
銃撃の2日後にステージに立ったこと自体は事実ですが、この言葉は本人の発言として確かめられていません。
「素晴らしい女性なら、簡単には手に入らない」
「If she's amazing, she won't be easy.」で始まる恋愛についての言葉も、ボブ・マーリーの名言としてSNSで広まっています。
しかし、この言葉は曲の歌詞にもインタビューにも見当たらず、ネット上で本人の名前と結びついて広まったものと考えられています。
そのほか出典が見つからない言葉
次の言葉も、ボブ・マーリーの名言としてよく見かけますが、曲の歌詞にもインタビューにも出どころが見つかっていません。
- Love the life you live. Live the life you love.(自分の人生を愛し、愛する人生を生きよ)
- You never know how strong you are, until being strong is your only choice.(強くなるしかなくなるまで、自分の強さは分からない)
- The day you stop racing is the day you win the race.(競争をやめた日が、競争に勝った日だ)
- Better to die fighting for freedom than be a prisoner all the days of your life.(一生囚われて生きるより、自由のために戦って死ぬほうがいい)
また、最期に息子へ残した言葉として「Money can't buy life.(お金で命は買えない)」が知られていますが、誰がその言葉を聞いたのかについて伝え方が分かれており、確かな記録は見つかっていません。
ボブ・マーリーの名言に関するよくある質問
「Love the life you live. Live the life you love.」はボブ・マーリーの言葉ですか?
曲の歌詞にもインタビューにも出どころが見つかっておらず、本人の言葉とは確かめられていません。
名言サイトで本人の言葉として広まった例の一つです。
ボブ・マーリーの確かな言葉にはどんなものがありますか?
1978年の音楽誌のインタビューで語った「To me the word love is God.(自分にとって、愛という言葉は神なんだ)」があります。
1980年のテレビインタビューでの「Rastafari not a culture, it's a reality.」もよく知られています。
「No Woman, No Cry」はどういう意味ですか?
「女なしでは泣かずにすむ」という意味ではなく、「女性よ、泣かないで」と語りかけるタイトルです。
トレンチタウンで過ごした日々を振り返りながら、苦しい中で暮らす女性を励ます歌です。
ボブ・マーリーの名言を使うときに気をつけることはありますか?
英語の名言画像で出回っている言葉は、本人の言葉ではないものが多いので、出典を確かめてから使うと安心です。
曲の歌詞を使いたいときは、曲名を添えて紹介し、長く書き写さないようにします。
ボブ・マーリーの名言のまとめ
ボブ・マーリーの名言として広まっている英語の言葉には、本人の言葉ではないものや、出典が見つからないものが多く含まれています。
本人の考えを知りたいときは、インタビューでの発言と、代表曲が何を歌ったのかを分けて読むのが確かです。
一つだけ持ち帰るなら、1978年のインタビューで語った「To me the word love is God.(自分にとって、愛という言葉は神なんだ)」です。
名言の画像を見かけたら、まずは曲そのものを聴いて、ボブ・マーリーの言葉にふれてみてください。