銀の匙の名言でよく知られているのが、校長先生の「生きるための逃げは有りです」や、八軒が豚丼のベーコンを食べたときの言葉です。
ただ、銀の匙の名言として広まっている言葉には、言い回しが変わっていたり、同じ題名の中勘助の小説や、別の作品の台詞と混ざっていたりするものもあります。
銀の匙の名言は、台詞だけでなく、発言者と場面、農業高校で向き合った命やお金の現実まで確かめると、登場人物たちが悩みながら見つけた答えの重みがより深く伝わります。
荒川弘さんの漫画『銀の匙 Silver Spoon』の名台詞には人物と場面をそえ、豚丼や駒場の退学などの名場面と、ほかの作品の言葉と混ざって広まった例も扱っています。
この記事のポイント
- 「生きるための逃げは有りです」は、逃げてきた八軒を肯定する校長先生の言葉
- 八軒の名言の多くは、豚丼や駒場の退学など、命とお金に向き合う場面から生まれた
- 馬術の台詞が、中勘助の小説『銀の匙』の言葉として誤って紹介されている
- 「人の夢を否定しない人間に、俺はなりたい」は原作と言い回しが違う
銀の匙の名言一覧
この記事で紹介する主な名言を、発言者と場面つきで一覧にします。
| 名言 | 発言者 | 場面 |
|---|---|---|
| 生きるための逃げは有りです | 校長先生 | 八軒の入学理由を聞いて |
| 努力が報われないってのは…なんかやだな… | 八軒勇吾 | 入学したばかりのころ |
| 本当に美味いもの食べた時って笑いしか出ないんだな | 八軒勇吾 | 豚丼のベーコンを食べて |
| わかろうとする努力はやめたくない | 八軒とアキ | 駒場の退学をめぐって |
| 野球筋と農筋は別物だ | 常盤恵次 | 農作業の場面 |
| 人の夢を否定しない人間になる | 八軒勇吾 | 物語の終盤 |
銀の匙とは
『銀の匙 Silver Spoon』は、荒川弘さんが2011年から2019年まで『週刊少年サンデー』で連載した漫画で、単行本は全15巻です(参考:小学館)。
札幌の進学校での競争に疲れた八軒勇吾が、寮のある北海道の大蝦夷農業高校(エゾノー)に入学し、農家の子どもたちと一緒に、命やお金、将来の夢に向き合っていく物語です。
舞台の大蝦夷農業高校は、北海道の帯広農業高等学校がモデルとされていて、牛や豚の世話、乳しぼり、馬術部の活動など、農業高校ならではの毎日が細かく描かれています。
作者の荒川さん自身が北海道の農家の出身で、農業高校を卒業後、実家で農業に携わった経験が、作品のリアルな描写に生かされています。
2013年と2014年にテレビアニメが放送され、2014年には中島健人さん主演で実写映画にもなりました。
作者の荒川弘さんの代表作では、鋼の錬金術師のエドやホーエンハイムの名台詞を巻と場面つきで解説した記事もあります。
原作の1巻は、八軒がエゾノーに入学するところから始まります。
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八軒勇吾の名言
主人公の八軒の言葉には、正解のない問題から逃げずに悩み続ける、彼の誠実さが表れています。
努力が報われないってのは…なんかやだな…
エゾノーに入学したばかりのころ、うまく言葉にできない思いを八軒がもらす台詞です。
進学校で努力しても結果が出なかった八軒の悔しさがにじむ言葉で、のちに農家の厳しい現実を知ることで、この思いはさらに重みを増していきます。
本当に美味いもの食べた時って笑いしか出ないんだな
実習で世話をした子豚に「豚丼」と名前をつけてしまった八軒が、出荷された豚丼の肉を自分のアルバイト代で買い取り、仲間とベーコンにして食べたときの言葉です。
育てた命をいただくことへの迷いや罪悪感を抱えたまま、それを自分の体に受け入れる、八軒の大きな通過儀礼の場面で生まれた言葉です。
人の夢を否定しない人間になる
物語の終盤、仲間の大きな夢を前にした八軒が、自分の生き方として決める言葉です。
ネットでは「人の夢を否定しない人間に、俺はなりたい」という形で広まっていますが、原作の言い回しとは少し違います。
かつて自分の夢を持てなかった八軒が、人の夢を応援する側に立つまでに成長したことが伝わる、物語を締めくくるにふさわしい言葉です。
アニメ『銀の匙 Silver Spoon』は、DMM TVで第1期と第2期が配信されています。
北海道の牧場や実習の様子は、アニメで見ると、八軒たちの毎日の大変さと楽しさがいっそう伝わってきます。
配信状況や料金は変わることがあるため、公式サイトで確認してください。
\ エゾノーの毎日を映像で /
駒場や仲間たちの名言
エゾノーの仲間たちの言葉には、農家に生まれた子どもたちが背負う現実と、それぞれの夢が表れています。
わかろうとする努力はやめたくない
同級生の駒場一郎の家が借金で牧場をたたむことになり、駒場が高校をやめて働きに出る場面をめぐって、八軒とアキが口にする思いです。
友達のためにどうすればいいかわからなくても、相手の気持ちをわかろうとすることだけはやめたくない、という意味で、答えの出ない苦しみに寄り添い続ける姿勢が込められています。
野球筋と農筋は別物だ
農家の息子の常盤恵次が、スポーツで鍛えた体力と、長時間の農作業で使う体力は違うと力説する台詞です。
コミカルな場面の言葉ですが、農業の大変さを体で知っている常盤らしい一言として、ファンの間で親しまれています。
ほかのアニメの名言もあわせて読みたい方は、アニメの名言を解説した記事も読んでみてください。
先生たちの名言
エゾノーの先生たちは、悩む生徒たちに、競争とは違う生き方があることを教えてくれます。
生きるための逃げは有りです。有り有りです
進学校での競争から逃げるようにエゾノーへ来たことに負い目を感じる八軒に、校長先生がかける言葉です。
逃げ道のない家畜と違って、人間は生きるために逃げてもいい、という意味で、逃げた先での出会いや経験をプラスに変えていけばいいと、八軒の心を軽くしました。
自分を責めがちな人の心にも届く言葉として、作品の中でも特に人気のある名言です。
名言が生まれた名場面
銀の匙の名言は、物語の中でも特に重い決断の場面から生まれています。
豚丼のエピソード
農家出身の生徒たちが「家畜はペットではない」と割り切る中、八軒だけは名前をつけた豚丼との線を引けずに悩みます。
出荷された豚丼が肉になって戻ってきたとき、八軒は目をそらさずにその肉を買い取り、自分で食べることを選び、命をいただいて生きるという事実に向き合いました。
駒場の退学と八軒の起業
プロ野球選手になって実家の牧場を立て直すという駒場の夢は、借金による離農で断たれ、駒場は高校をやめて働きに出ます。
この出来事は八軒に大きな無力感を残しますが、やがて八軒は仲間と会社を立ち上げる道を選び、逃げてきた場所で自分のやりたいことを見つけていきます。
誤って広まった銀の匙の名言
銀の匙の名言として紹介される言葉の中には、作品や発言者を取り違えて広まったものもあります。
中勘助の小説『銀の匙』の言葉とされる台詞
「自分に合った馬に乗るのは楽でいいですけど、馬の個性に自分を合わせていく乗り方も面白いですよ」は、漫画『銀の匙 Silver Spoon』の馬術部の場面の台詞です。
同じ題名の中勘助の小説『銀の匙』は、病弱な少年の幼いころを描いた作品で、馬術の話は出てきませんが、題名が同じため、作家の言葉として紹介されている例があります。
ほかのアニメの台詞が混ざった例
「わかろうとする努力はやめたくない」と一緒に、人は他人を完全には理解できない、という内容の長い文章が紹介されることがあります。
この文章はアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の台詞で、似たテーマのために結びつけられたもので、銀の匙の台詞ではありません。
銀の匙の名言に関するよくある質問
「生きるための逃げは有りです」は誰の台詞ですか?
エゾノーの校長先生が、進学校から逃げてきたことに悩む八軒にかけた言葉です。
中勘助の『銀の匙』と漫画の『銀の匙』は関係がありますか?
題名は同じですが別の作品で、中勘助の小説は少年の幼いころを描いた自伝的な作品です。
銀の匙は全何巻ですか?
原作の単行本は全15巻で、2019年に完結しました。
銀の匙のアニメはどこで見られますか?
DMM TVで、アニメの第1期と第2期が配信されています。
銀の匙の名言まとめ
銀の匙の名言は、台詞だけでなく、発言者と場面、農業高校で向き合った命やお金の現実まで確かめると、登場人物たちが悩みながら見つけた答えの重みがより深く伝わります。
豚丼をいただく八軒の決断や、駒場の退学をめぐる言葉には、正解のない問題に向き合い続ける大切さが込められています。
一方で、同じ題名の小説や、ほかのアニメの言葉と混ざって広まった例もあります。
持ち帰りたい一言を選ぶなら、校長先生の「生きるための逃げは有りです」です。
気になった名言は、原作やアニメの場面に戻って前後の物語ごと味わってみてください。