やる気が出ないときに名言を探すと、気分を一気に上げてくれる強い言葉がたくさん見つかります。
ただ、落ち込んでいるときほど、強い言葉は重く感じられることもあります。
前向きな名言は、無理に気分を上げる言葉だけでなく、小さな行動に戻れる言葉を選ぶと、落ち込んだ時にも受け止めやすくなります。
イチロー選手の「少しずつの積み重ねでしか自分を超えていけない」は引退会見の言葉で、「危ぶむなかれ」の言葉は一休ではなく清沢哲夫の詩「道」がもとです。
この記事のポイント
- 気分を上げる言葉より、次の一歩が見える言葉のほうが続けやすい
- イチロー選手の「少しずつの積み重ねでしか自分を超えていけない」は引退会見の言葉
- 「危ぶむなかれ」の言葉は、一休ではなく清沢哲夫の詩「道」がもと
- 「心が変われば行動が変わる」は、原典が確かめられていない言葉
やる気が出る名言の選び方
やる気が出る名言には、大きく分けて2つの種類があります。
どちらがよいというより、今の自分の状態に合うほうを選ぶのが大切です。
気負いすぎたときに肩の力を抜く言葉では、ワンパンマンの名セリフを解説した記事もあります。
| 言葉の種類 | 特徴 | 向いているとき |
|---|---|---|
| 気分を上げる言葉 | 「必ずできる」「限界を超えろ」のように、気持ちを一気に高める | 元気はあるが、あと一押しがほしいとき |
| 小さな行動に戻れる言葉 | 「一歩踏み出す」「少しずつ積み重ねる」のように、次にすることが見える | 疲れていて、何から手をつければいいか分からないとき |
落ち込んでいるときに「限界を超えろ」と言われても、今の自分との差が大きすぎて、かえって動けなくなることがあります。
そんなときは、今日できる小さなことを思い出させてくれる言葉のほうが、受け止めやすいはずです。
この記事では、この「小さな行動に戻れる言葉」を中心に紹介します。
一歩を踏み出したいときの名言
何かを始める前は、先が見えないことが一番の不安になります。
ここでは、先が見えなくても歩き出すことを後押ししてくれる言葉を紹介します。
格闘漫画の台詞で気持ちを奮い立たせたい方は、やる気が出るバキの名セリフをキャラ・場面別に解説した記事もあります。
僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る(高村光太郎「道程」)
詩人で彫刻家の高村光太郎が、1914年(大正3年)に雑誌『美の廢墟』で発表した詩「道程」の一節です(出典:青空文庫「道程」)。
「どこかに通じてる大道を僕は歩いてゐるのぢやない」という行から始まり、「僕の前に道はない 僕の後ろに道は出來る」と続きます。
最初から用意された道を歩くのではなく、自分が歩いた跡があとから道になる、という意味です。
雑誌で発表されたときの詩はここから長く続き、迷いながら進んできた道をふり返る言葉が重ねられています。
正解の道が見えないまま踏み出すことに不安があるとき、まず一歩進めばそれが道になると考えられる言葉です。
高村光太郎の「道程」は、同じ題名の詩集に収められています。
\ 一歩を支える詩を手元に /
危ぶむなかれ 踏み出せばその一足が道となる(清沢哲夫「道」)
「この道を行けばどうなるものか 危ぶむなかれ 危ぶめば道はなし」で始まる言葉は、アントニオ猪木さんが1998年の引退の際に読み上げたことで広く知られるようになりました。
猪木さんの自伝では一休宗純の言葉として紹介されていますが、一休の言葉であることを示す資料は見つかっていません。
国立国会図書館のレファレンス協同データベースでは、清沢哲夫(のちの暁烏哲夫)の詩「道」がもとで、猪木さんの言葉はその改変である可能性が高いとしています(出典:レファレンス協同データベース)。
清沢哲夫の詩は、1951年(昭和26年)に『同帰』第335号で発表され、のちに『無常断章』に収められています。
あれこれ心配して立ち止まるより、踏み出した一歩がそのまま道になる、という考え方は、高村光太郎の「道程」にも通じます。
小さな積み重ねを支える名言
やる気が長続きしないと感じるとき、目標が大きすぎることがあります。
ここでは、少しずつ進むことの意味を教えてくれる言葉を紹介します。
少しずつの積み重ねでしか自分を超えていけない(イチロー)
2019年3月21日、東京ドームでの試合のあと、イチロー選手は現役引退の記者会見を開きました。
ファンに伝えたいことを聞かれたイチロー選手は、人より頑張ることなんてとてもできない、はかりは自分の中にある、と話しています。
そのうえで「少しずつの積み重ねでしか自分を超えていけないと思う」と語りました(出典:時事ドットコム)。
一気に高みに行こうとすると今の自分とのギャップが大きすぎて続けられない、だから地道に進むしかない、とも続けています。
日米通算4367安打を打った選手が、特別な近道ではなく、自分の限界を少しだけ超えることの繰り返しを語った言葉です。
遠回りすることでしか本当の自分に出会えない(イチロー)
同じ引退会見で、イチロー選手は、自分がやると決めたことを信じてやっていくと話したあと、それが正解とは限らないとも語っています。
間違ったことを続けてしまうこともあるが、「そうやって遠回りすることでしか本当の自分に出会えない気がしている」と続けました。
うまくいかない時期や、後戻りしているように感じる時期も、自分に出会うための道のりの一部だと受け取れる言葉です。
努力しても結果が出ないと感じるときに思い出したい言葉は、「努力は必ず報われる」という言葉の意味を解説した記事でも紹介しています。
之を好む者は之を楽しむ者に如かず(論語)
勉強や仕事が「やらなければならないこと」になって、やる気が出ないときに思い出したいのが、『論語』雍也篇の一節です。
「之を知る者は之を好む者に如かず、之を好む者は之を楽しむ者に如かず」と書かれています。
知っているだけの人は好きな人に及ばず、好きな人はそれを楽しんでいる人に及ばない、という意味です。
義務としてこなすより、少しでも楽しめる部分を見つけたほうが長く続けられる、と読むことができます。
落ち込んだ時に受け止めやすい言葉の探し方
気持ちが沈んでいるときは、強い言葉より、自分の状況に近い場面で語られた言葉のほうが心に届きやすくなります。
ここでは、言葉の探し方を紹介します。
自分と同じ状況の場面から探す
名言は、それが語られた場面を知ると、自分の状況に重ねやすくなります。
たとえば、イチロー選手の言葉は、45歳で引退を決めた選手が、それまでの日々をふり返って語ったものです。
結果が出ずに悩んでいるときは「遠回り」の言葉を、何から始めればいいか分からないときは「道程」を、というように、今の自分に近い場面の言葉を選んでみてください。
次の順番で探すと、自分に合う言葉を見つけやすくなります。
- 今の気持ちを一言で書き出す(不安、疲れ、迷いなど)
- 同じ気持ちになった人の場面を思い浮かべる
- その場面で語られた言葉と、誰がいつ言ったのかを確かめる
- 言葉の中から、今日できる小さな行動を1つ決める
漫画やアニメの言葉を借りる
やる気が出る言葉は、漫画やアニメのキャラクターの台詞から見つかることも多くあります。
たとえば『宇宙兄弟』には、南波六太の「俺の敵はだいたい俺です」のように、自分自身と向き合う言葉が数多く出てきます。
作品の台詞は、巻数や話数と場面まで知ると意味が深まるので、宇宙兄弟の名言を場面別に解説した記事もあわせて読んでみてください。
出典を確かめたいやる気が出る名言
やる気が出る名言として広まっている言葉の中には、誰が言ったのかが確かめられないものも少なくありません。
使う前に知っておきたい代表的な言葉を紹介します。
「心が変われば行動が変わる」
「心が変われば行動が変わる、行動が変われば習慣が変わる、習慣が変われば人格が変わる、人格が変われば運命が変わる」という言葉は、心理学者ウィリアム・ジェームズの言葉として紹介されることがあります。
しかし、図書館の調査では、ジェームズの著作にこの言葉そのものは見つからず、元になった英語の原文も特定できなかったとされています(出典:レファレンス協同データベース)。
同じ調査では、松井秀喜さんが星稜高校時代に野球部の山下智茂監督から贈られた言葉であることや、ヒンズー教の教えとして紹介する本があることも記録されています。
行動を変えるきっかけになる言葉ですが、特定の人物の言葉として紹介するのは避けたほうが安心です。
「何も咲かない寒い日は、下へ下へと根を伸ばせ」
「何も咲かない寒い日は、下へ下へと根を伸ばせ。やがて大きな花が咲く」は、マラソンの高橋尚子さんの座右の銘として広く紹介されている言葉です。
高校時代の恩師から贈られた言葉で、もとは実業家の後藤清一さんの言葉だとも紹介されていますが、この記事では本人の著書やインタビューで確かめることができませんでした。
結果が出ない時期にも見えないところで力を蓄える、という意味で、小さな積み重ねを支える言葉として人気があります。
そのほかの出典が見つからない言葉
次の言葉も、やる気が出る名言としてよく紹介されますが、発言した人や出典を確かめることができませんでした。
- 「人間、死んだらいくらでも休めるんだ。今勉強しなくてどうする」(経営コンサルタントの大前研一さんの言葉とされる)
- 「じっくり考えろ。しかし、行動する時が来たなら、考えるのをやめて、進め」(ナポレオンの言葉とされる)
- 「今、この瞬間から始めなければ何も変わらない」(発言者不明)
言葉そのものに励まされるのはよいことですが、誰かの言葉として人に伝えるときは、出典が示されているかを確かめてから使ってください。
出典のはっきりした言葉をまとめて読みたい方は、名言を集めた本や、詩集で探す方法もあります。
やる気が出る名言に関するよくある質問
短くてやる気が出る名言はありますか?
高村光太郎の「僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る」は、短く覚えやすい言葉です。
先が見えないときに、まず一歩進むことを思い出させてくれます。
「この道を行けばどうなるものか」は一休さんの言葉ですか?
一休の言葉であることを示す資料は見つかっていません。
清沢哲夫の詩「道」がもとになった言葉と考えられています。
勉強のやる気が出ないときにおすすめの名言は?
『論語』の「之を好む者は之を楽しむ者に如かず」が合います。
義務としてこなすより、楽しめる部分を見つけたほうが続けやすいという考え方です。
名言を読んでもやる気が出ないときはどうすればいいですか?
無理に気分を上げようとせず、今日できる小さな行動を1つだけ決めてみてください。
疲れが続くときは、休むことを優先してかまいません。
やる気が出る名言のまとめ
前向きな名言は、無理に気分を上げる言葉だけでなく、小さな行動に戻れる言葉を選ぶと、落ち込んだ時にも受け止めやすくなります。
「道程」や清沢哲夫の「道」は一歩を踏み出すことを、イチロー選手の言葉は少しずつ積み重ねることを教えてくれます。
持ち帰りたい一言を選ぶなら、イチロー選手の「少しずつの積み重ねでしか自分を超えていけない」です。
一方で、「心が変われば行動が変わる」のように、出典が確かめられないまま広まっている言葉もあります。
気に入った言葉が見つかったら、今日できる小さな行動を1つだけ決めてみてください。